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「体育館の殺人」

Jul 20, 2023

「体育館の殺人」という本を読んだ。これはKindle Unlimitedで無料だったため購入して、そこまで期待もせず読んだが、なかなか良かった。まず、難易度が僕にとってはベストだった。ミステリをその読者が楽しめるかどうかって、やっぱりそのロジックに対して納得できるかどうかという点だと思う。そういう意味で、僕にとって難しすぎるミステリは、悔しいが僕の頭の理解がついていかないせいで楽しめないこともある。


例えば、僕は霊媒探偵城塚翡翠シリーズをオーディオブックで聴いたのだが、話全体はアイデアが面白いし構成も上手い、どんでん返しもあるで、すごい楽しめたのだが、トリックパートで城塚翡翠がどのようにして犯人を殺害現場をひと目見ただけで導き出したというロジックが、全然頭に入ってこないし意味が分からなかった。これはオーディオブックでトリックが難解なミステリーを聴くのはページを行き来して考察するのが難しいというのもあるのだろうが、翡翠ちゃんが所謂「読者への挑戦状」を読み上げた時に考える気にすらならなかった。


でもこの本を読んでいる時は、探偵役である裏染天馬が事件の謎を解いて挑戦状が読まれた時、一回次のページに進むのをやめて前のページを読み返して考える気になれた。これは今回はKindleで、城塚翡翠シリーズはオーディオブックだからなのかもしれないが、各媒体に置いてちょうど良い難易度のミステリーにあたると、推理パートの前に自分で推理して答え合わせをする、という楽しみ方ができるので2倍楽しめると僕は思っている。


裏染天馬が説明するロジックはどれも僕にとって納得感があり、理解も容易にできる、なおかつ簡単すぎないから良いのだ。自分の好きなミステリーを探すときに、この尺度を判断材料にするのってすごく難しいよね。だって僕よりめちゃめちゃ頭の良い人達はたぶん、この本じゃ物足りないんだろうなーとおもう。だから、ブックレビューサイトとかで、この作品に高評価をした人はあの作品も高評価してますみたいな指標をいれたり、評価する際に、自分が思うこの作品を好きなら楽しめる作品をいれれるような機能をつけたら、それはなかなか有用なのではないかと思う。また、その作品を鑑賞した媒体(Kindle,紙、オーディオブック等々)も記録したら、それを元に機械学習モデルがおすすめをはじき出し、ユーザーに作品をおすすめする。といった仕様にもできると思う。


また話がそれてしまったが、「体育館の殺人」は、僕にとってとても心地よい難易度で思考させてくれたし、かと言ってトリックが見破れたわけでもなく、最後まで楽しく読めた。僕はそんなに気にならないが、動機についてはリアリティがあるかと言われれば微妙かもしれない。でも人を殺す理由なんて、おそらく他の人からしたら、「えーそんなことで殺すの?」とか思う程度の一時的な感情の爆発であることも多いのだろうな。とも思う。僕が妻によく怒られていることの大半は、僕にとっては「なんでこんなことで怒っているのだろう?」となることが多いが、彼女にとっては大事な問題だし、その逆もありうるわけである。そもそもミステリー小説において、動機の部分は人々の共感を得ることは非常に難しいだろう。なぜそう思うかというと、世の中のほとんどの人たちは、実際に殺人をしたことがないし、本物の殺意を覚えたことがないと僕は思うからだ。「思う」といったのは、これも僕の主観ではあるし、案外人々の大半はホンモノに近い殺意を覚えているかもしれないし、僕にはそれがわからないだけかもしれないからだが、少なくとも僕にはいま身の回りにいる人に何をどこまでされたら殺意を覚えるのかが想像できないし、そんなことは現実世界で起こり得ると思えない。


ここから少しネタバレになってしまうが、

生徒会長がカンニングを実行した経緯は少しお粗末だと感じられた。というのも別に生徒会長が成績に困っていた描写もなかったしカンニングしたのは今回が初めてだということだった。ということは今まで生徒会長は自力で内申を稼いでいて、成績もそれなりに良かったんでしょ?それなのに今回だけ、副会長にちょっとだけそそのかされただけでカンニングするかなーとおもった。そんな困ってたの?と。

それならばもうちょっとコマ数を割いて、生徒会長が今回のテストに不安を覚えていた描写もしくは、なにか理由があって準備不足に陥っていたことを記すべきである。高校生にとって内申を稼ぐことは、おそらく受験で指定校推薦を得るためなので、生徒会長になるほど内申が稼げていたのならそんなカンニングしてまで更に点数を稼がなくっても良くない?と思ってしまった。



裏染天馬という探偵役のキャラクターも嫌いではなかったし、生徒会の面々のキャラクターもなかなかおもしろかった。裏染天馬はシリーズ化されていて他の本もあるので、また少ししたら続編も読んでみようと思っている。


思考の原石を、磨きつづける。

© Motokusa — Thoughts in the Rough